吸血鬼の歴史に詳しくなるブログ

吸血鬼の形成の歴史を民間伝承と海外文学の観点から詳しく解説、日本の解説書では紹介されたことがない貴重な情報も紹介します。ニコニコ動画「ゆっくりと学ぶ吸血鬼」もぜひご覧ください。

MENU

吸血鬼小説「死者よ目覚めるなかれ」の作者を間違えたのは、ピーター・ヘイニングではなかった?【捏造シリーズ⑦】

シリーズ目次(クリックで展開)吸血鬼小説『死者よ目覚めるなかれ』の作者はティークではなくて別人だった!本当の作者とは!?
(ヘイニングの不正を知る前の記事)
女性作家による最初の吸血鬼小説「骸骨伯爵、あるいは女吸血鬼」が捏造作品だったことについて
古典小説「フランケンシュタインの古塔」はピーター・ヘイニングの捏造?他にもある数々の疑惑
ホレス・ウォルポールの幻の作品「マダレーナ」が、別人の作品だった
女性で最初に吸血鬼小説を書いたエリザベス・グレイという作家は存在していなかった
ドラキュラに影響を与えた作者不詳の吸血鬼小説「謎の男」の作者が判明していた
ドラキュラのブラム・ストーカー、オペラ座の怪人のガストン・ルルーに関する捏造
⑦この記事

 吸血鬼小説「死者よ目覚めるなかれ」という作品は、日本では長らく作者はドイツのヨハン・ルートヴィヒ・ティークの作品で、1800年作であると紹介されていた。だが本当の作者はドイツの多作劇作家、エルンスト・ラウパッハであり、初出は1823年であった。日本で間違えて紹介され続けたのは、1994年のマシュー・バンソン「吸血鬼の事典」の影響だろう。だが、そもそも間違いが広まった原因は、英国のアンソロジスト、故・ピーター・ヘイニングのアンソロジーからだとされていた。その経緯を日本で最初に紹介したのは、2017年に私がニコニコのブロマガで投稿した記事だろう。当時はピーター・ヘイニングの数々の捏造疑惑を知らなかったので、ヘイニングの単純ミスではないかとして紹介した。だがヘイニングの数々の怪しい疑惑を知った現在では、「いつものヘイニングの捏造案件」であると思っていた。


 ところが、あるきっかけで色々調査をしていたら、ヘイニングよりも前に作者をルートヴィヒ・ティークだと間違えて紹介していた人を発見した。これまで私はヘイニングの「いつもの捏造」と言いきってしまっていたが、そうでない可能性が浮上した。そして今まで私が見てきた資料をよく読めば、ヘイニングのせいとは言いきれないことも読み取れることが判明。今回はその経緯と検証結果を紹介していきたい。できれば過去記事を読んで経緯を知ってから、この記事をご覧頂きたい。


過去記事(ニコニコブロマガ版)
site.nicovideo.jp
過去記事(はてなブログ移行版)
www.vampire-load-ruthven.com

続きを読む

ポール・バーバー著「ヴァンパイアと屍体」:「蹄鉄や手榴弾の場合と同じ」とはどういう意味なのか

ヴァンパイアと屍体
ヴァンパイアと屍体 新装版

 2022年5月26日に、工作舎よりポール・バーバー・著/野村美紀子・訳「ヴァンパイアと屍体 死と埋葬のフォークロア」の新装版が発売された。これは1991年翻訳・発売されたものであるが、復刊の要望が多かったらしく、今回装いを新たにして発売された。これは吸血鬼と言う存在を現代法医学の観点から詳細に分析し解説した書籍。吸血鬼には「杭で心臓刺せば死ぬ」「ニンニクが弱点」「物を数える習性がある」といった弱点があり、その弱点の理由を考察したり議論する場面をネット上のどこかしらで見かけることがあるが、そうした疑問に、容赦なくその理由を答えてくれる書籍である。吸血鬼の弱点は科学知識を持たない当時の人たちが、一生懸命考えた末の結論であることがわかるだろう。著者のポール・バーバー博士はドイツ文学専攻、民俗学が専門であるが、法医学的観点から吸血鬼を論じたこの書籍は、民俗学はおろか医学会からも称賛を受けたという、大変信頼のおける吸血鬼研究本である。吸血鬼退治にも科学知識が全く持っていなかった人たちが、工夫していたことが分かる。アニメや漫画の吸血鬼しか知らない人が読めば、吸血鬼イメージがぶち壊れてしまうかもしれない一冊である。


 さてそんな本が30年以上の時を経てカバーデザインを新しくして再版されたのだが、旧版のときから一つだけずっと気になっていたことがあった。それは本文中に「手榴弾」という言葉が出てくるのである。この手榴弾という訳は当然誤訳であると思っていたのだが、今回の新装版でもそのままであった。そこで急遽調べてみたら誤訳ではなく、英語圏には古くからある慣用句の意味で使っていたことがわかった。実は数年前ニコニコ動画では誤訳と決めつけて紹介してしまっていた。知らなかったとはいえ間違いと決めつけてしまったことは事実。今回はその私の思い込み故の恥を紹介していきたい。

続きを読む

ドラキュラのブラム・ストーカーから、オペラ座の怪人のガストン・ルルーまで、まだまだある【ピーター・ヘイニングの捏造疑惑⑥】

シリーズ目次(クリックで展開)吸血鬼小説『死者よ目覚めるなかれ』の作者はティークではなくて別人だった!本当の作者とは!?
(ヘイニングの不正を知る前の記事)
女性作家による最初の吸血鬼小説「骸骨伯爵、あるいは女吸血鬼」が捏造作品だったことについて
古典小説「フランケンシュタインの古塔」はピーター・ヘイニングの捏造?他にもある数々の疑惑
ホレス・ウォルポールの幻の作品「マダレーナ」が、別人の作品だった
女性で最初に吸血鬼小説を書いたエリザベス・グレイという作家は存在していなかった
ドラキュラに影響を与えた作者不詳の吸血鬼小説「謎の男」の作者が判明していた
⑥この記事

 英国のホラー・アンソロジスト、ピーター・ヘイニングの数々の捏造疑惑をこれまで紹介してきた。「死者よ目覚めるなかれ」「マダレーナ」のような、作者を意図的に間違えて紹介する不正、「バネ足ジャック」のような都市伝説を、ありもしない証拠で実在していたとごり押しした件、挙句の果てには「骸骨伯爵」「フランケンシュタインの古塔」のように、「新発見した」と言いたいがために作品そのものを捏造する不正などなど、ヘイニングは数々の不正疑惑があった。そしてそれは、完全には不正とは言いきれない限りなく黒に近い灰色であり、ヘイニングの主張が完全に嘘と言いきれないことが何とも嫌らしいことは、過去記事で解説してきた通り。私が知りうるヘイニングの不正は前回記事で全てだったが、その後の調査で彼の不正疑惑はまだあったことが判明した。それどころか、かなり手の込んだ捏造まで手を染めていたことが判明した。いや、もう、あまりにも酷すぎて言葉を失うほどであった。もちろん一方的な書き込みであり、自分で検証したわけではないが、そう怪しまれる言動をしてきたヘイニングも悪いし、書き込んだ方もそれなりの検証をしていることが伺える。とまれ、ネット上の書き込み流石にそれを一つ一つ検証する労力は流石にないので、今回はネット上にあった書き込みを紹介するだけにとどまるが、どうかご了承頂きたい。

続きを読む

ドラキュラに影響を与えた作者不詳の吸血鬼小説「謎の男」の作者が判明していた【ピーター・ヘイニングの捏造疑惑⑤】

シリーズ目次(クリックで展開)吸血鬼小説『死者よ目覚めるなかれ』の作者はティークではなくて別人だった!本当の作者とは!?(ヘイニングの不正を知る前の記事)
女性作家による最初の吸血鬼小説「骸骨伯爵、あるいは女吸血鬼」が捏造作品だったことについて
古典小説「フランケンシュタインの古塔」はピーター・ヘイニングの捏造?他にもある数々の疑惑
ホレス・ウォルポールの幻の作品「マダレーナ」が、別人の作品だった
女性で最初に吸血鬼小説を書いたエリザベス・グレイという作家は存在していなかった
⑤この記事
ドラキュラのブラム・ストーカー、オペラ座の怪人のガストン・ルルーなど、まだまだある捏造疑惑

 吸血鬼の代名詞といえば、なんといってもブラム・ストーカーの「吸血鬼ドラキュラ」(1897)だろう。そのドラキュラに影響を与えたとされる吸血鬼小説はいくつかある。その中でも1860年に作られたとされる「謎の男」"The Mysterious Stranger"という吸血鬼小説は、これまで作者不詳として紹介されてきた。ところが近年になって「謎の男」の作者が判明しており、海外では普通に作者が公開されていた。日本ではこれまで紹介された形跡はないので、当ブログが本邦初の紹介となるだろう。


 そして今回の記事のタイトルには「ピーター・ヘイニングの捏造疑惑」とつけてある。そう、「謎の男」の作者判明の背景には、またしてもピーター・ヘイニングが絡んでくる。過去4回にわたりヘイニングの数々の不正疑惑を解説してきた。今回の「謎の男」に関しては、ヘイニングはなんら不正はしていない。だが「謎の男」の本当の作者が判明した背景には、ヘイニングが関わってくる。ということで、そのあたりの事情を今回は紹介していこう。


過去記事はこちらへ
www.vampire-load-ruthven.com

続きを読む

女性で最初に吸血鬼小説を書いたエリザベス・グレイという作家は存在していなかった【ピーター・ヘイニングの捏造疑惑④】

シリーズ目次(クリックで展開)吸血鬼小説『死者よ目覚めるなかれ』の作者はティークではなくて別人だった!本当の作者とは!?(ヘイニングの不正を知る前の記事)
女性作家による最初の吸血鬼小説「骸骨伯爵、あるいは女吸血鬼」が捏造作品だったことについて
古典小説「フランケンシュタインの古塔」はピーター・ヘイニングの捏造?他にもある数々の疑惑
ホレス・ウォルポールの幻の作品「マダレーナ」が、別人の作品だった
④この記事
ドラキュラに影響を与えた作者不詳の吸血鬼小説「謎の男」の作者が判明していた
ドラキュラのブラム・ストーカー、オペラ座の怪人のガストン・ルルーなど、まだまだある捏造疑惑

 前回の記事の続きより。女性作家による最初の吸血鬼小説「骸骨伯爵(1828)」は、イギリスのアンソロジスト、故ピーター・ヘイニングにより初めて紹介されたが、海外では現在ヘイニングによる捏造と考えられている。そのように思われてしまう理由は、ヘイニングには数々の不正疑惑があるから。「スウィーニー・トッド」「バネ足ジャック」などのイギリスの都市伝説に関しては実在していたと主張するも、検証可能な証拠は何一つ見せてこなかった。ルートヴィヒ・ティーク作「死者よ目覚めるなかれ」や、ホレス・ウォルポールの「マダレーナ」は、本当の作者は別にいたことが判明、マイナーなことを利用して作者を偽った可能性が非常に大きい。たとえ真面目に調査をしたのなら、調査や検証があまりにも杜撰すぎる。そしてヘイニングが発掘したという「フランケンシュタインの古塔」は、メアリー・シェリーの「フランケンシュタイン」に影響を与えたと主張するも、その「新発掘」した証拠品は一切見せず、逆にヘイニングの主張がかぎりなく嘘である証拠が見つかるほどだ。これを紹介した荒俣宏は「ヘイニングによる捏造だろう。それどころから彼は他にも同じ手法で「珍品」を捏造した過去がある」と言いきるほど。そしてまだ紹介していないが、ヘイニングはイギリス怪奇小説の巨匠、M・R・ジェイムズに関しても数々のでっちあげを行っている。こうした背景があるからか、ヘイニングが160年ぶりに発掘したというエリザベス・グレイの吸血鬼小説「骸骨伯爵、あるいは女吸血鬼」も、彼による捏造だろうと考えられている。実際、「骸骨伯爵」の実物の書誌は、彼は一切公開していない。


 だが前回の記事の終わり際でも述べたが「骸骨伯爵」の作者、エリザベス・グレイのことを再調査してみると、さらにとんでもない事実が判明した。なんとエリザベス・グレイという人も、実在せず捏造された存在であったことが判明した。だがエリザベス・グレイを捏造したのは、ピーター・ヘイニングではない。モンタギュー・サマーズ師が彼女の小説「手探りの試練」の書評を、ヘイニングが生まれた1940年に発表しているからだ。そう、ヘイニングはエリザベス・グレイが捏造された存在とは知らずに、「骸骨伯爵」は彼女の作品であると発表してしまった。このことからも「骸骨伯爵」という作品の実在性とヘイニングの主張が、極めて疑わしくなった。ということで、このあたりの経緯を詳しく説明していこう。


続きを読む

ホレス・ウォルポールの幻の作品「マダレーナ」が、別人の作品だった【ピーター・ヘイニングの捏造疑惑③】

シリーズ目次(クリックで展開)吸血鬼小説『死者よ目覚めるなかれ』の作者はティークではなくて別人だった!本当の作者とは!?(ヘイニングの不正を知る前の記事)
女性作家による最初の吸血鬼小説「骸骨伯爵、あるいは女吸血鬼」が捏造作品だったことについて
古典小説「フランケンシュタインの古塔」はピーター・ヘイニングの捏造?他にもある数々の疑惑
③この記事
女性で最初に吸血鬼小説を書いたエリザベス・グレイという作家は存在していなかった
ドラキュラに影響を与えた作者不詳の吸血鬼小説「謎の男」の作者が判明していた
ドラキュラのブラム・ストーカー、オペラ座の怪人のガストン・ルルーなど、まだまだある捏造疑惑

 前回の記事の続き。女性作家による最初の吸血鬼小説「骸骨伯爵(1828)」が、英国のホラー・アンソロジスト、故ピーター・ヘイニングによる捏造の疑いが発覚したことがきっかけで、彼の不正が芋づる式に判明した。エリザベス・グレイ作「骸骨伯爵」、作者不詳「フランケンシュタインの古塔」は、ヘイニングによる捏造の可能性が極めて高いこと。「スウィーニー・トッド」「バネ足ジャック」は、共に実在していたと主張するも、検証可能な証拠は一切示していない。吸血鬼小説「死者よ目覚めるなかれ」については、ドイツでは正しい作者で紹介していたのにも関わらず、作者を取り違えて紹介、英米の研究者は彼の説を鵜呑みにし、英米や日本では、長らく間違った作者で紹介され続けることになってしまった(その件を解説した記事のリンク)。そんな中、ヘイニングが150年ぶりに発見したというホレス・ウォルポールの「マダレーナ」も、ヘイニングの捏造ではないかと思っていると前回の記事で述べたが、読者の方から「マダレーナ」は実在する小説、但し作者はウォルポールではなくて別人という情報を頂いた。マダレーナの間違いについても日本では言及されたことがないので、今回急遽紹介することにした。

続きを読む

古典小説「フランケンシュタインの古塔」はピーター・ヘイニングの捏造?他にもある数々の疑惑【ピーター・ヘイニングの捏造疑惑②】

シリーズ目次(クリックで展開)吸血鬼小説『死者よ目覚めるなかれ』の作者はティークではなくて別人だった!本当の作者とは!?(ヘイニングの不正を知る前の記事)
女性作家による最初の吸血鬼小説「骸骨伯爵、あるいは女吸血鬼」が捏造作品だったことについて
②この記事
ホレス・ウォルポールの幻の作品「マダレーナ」が、別人の作品だった
女性で最初に吸血鬼小説を書いたエリザベス・グレイという作家は存在していなかった
ドラキュラに影響を与えた作者不詳の吸血鬼小説「謎の男」の作者が判明していた
ドラキュラのブラム・ストーカー、オペラ座の怪人のガストン・ルルーなど、まだまだある捏造疑惑


 女性作家による最初の吸血鬼小説「骸骨伯爵(1828)」、これはイギリスのアンソロジスト、故ピーター・ヘイニングが初めて紹介したが、これは海外ではヘイニングによる捏造である可能性が極めて高いと思われていることを前回の記事で紹介した。そして調査を進めるとヘイニングは架空の殺人鬼、理容師のスウィーニー・トッドは実在していたと主張するも、検証可能な典拠は何一つ示していないことも判明した。これ以上のことは分からないと思っていた矢先、ヘイニングはあのフランケンシュタインに関して、とんでもない嘘をでっちあげていたことが判明した。しかもそれは日本の書籍において紹介されていた。今回はその事に関して解説していこう。今回の内容は、ディオダティ荘の怪奇談義についてあらかじめ知っているという前提で話が進む。知らなくても一応分かるように解説してはいくが、やはり前知識があった方が理解しやすい。なのでよろしければ先に下記記事をご参照頂きたい。それとニコニコ動画では解説済みであるので、気になる方はそちらもぜひご覧ください。

www.vampire-load-ruthven.com

続きを読む