シリーズ目次(クリックで展開)
⓪吸血鬼小説『死者よ目覚めるなかれ』の作者はティークではなくて別人だった!本当の作者とは!?
(ヘイニングの不正を知る前の記事)
①女性作家による最初の吸血鬼小説「骸骨伯爵、あるいは女吸血鬼」が捏造作品だったことについて
②古典小説「フランケンシュタインの古塔」はピーター・ヘイニングの捏造?他にもある数々の疑惑
③ホレス・ウォルポールの幻の作品「マダレーナ」が、別人の作品だった
④女性で最初に吸血鬼小説を書いたエリザベス・グレイという作家は存在していなかった
⑤ドラキュラに影響を与えた作者不詳の吸血鬼小説「謎の男」の作者が判明していた
⑥ドラキュラのブラム・ストーカー、オペラ座の怪人のガストン・ルルーに関する捏造
⑦吸血鬼小説「死者よ目覚めるなかれ」の作者を間違えたのは、ピーター・ヘイニングではなかった?
⑧この記事
⑨【追補】吸血鬼小説「謎の男」の作者判明の経緯について
⑩アメリカ版「浦島太郎」として有名なリップ・ヴァン・ウィンクルの捏造
吸血鬼小説「死者よ目覚めるなかれ」(以降、「死者を起こすことなかれ」と表記)は長年、作者はドイツのヨハン・ルートヴィヒ・ティークとされ、1800年に発表されたものだとして紹介され続けてきた。だが、本当の作者はエルンスト・ラウパッハであり、その作者を間違えた紹介したのは、英国のアンソロジスト・故ピーター・ヘイニングが1972年に出したアンソロジーが原因であることが判明していた。その件を日本においては紹介したのは2017年、私がニコニコのブロマガで投稿した記事が最初であろう*1。私がこの件を初めて知ったのは、ジョージア大学ハイド・クロフォード講師の2012年と2016年の論文であり、クロフォードの論文を紹介しつつ、私のブログで紹介させてもらった。
2017年当時ブログで紹介した時、一つだけ不明なことがあり、それが気になって仕方がなかった。ヘイニングが「死者を起こすことなかれ」の作者を間違えたことは事実、だが彼は作品の発表年月日については、1800年作とは言ってないどころか、一切言及していない。それにもかかわらず、日本の複数の書籍で「1800年作」と紹介されている。2017年、作者取り違えの件についてブログで解説したときは、なぜ間違えたのか理由が皆目見当がつかなかったが、最近になって調査する手段が見いだせた。そして確定とはいかないが、ある程度筋の通った推測を立てることができた。しかも、日本において作者間違いが広がった原因は、ピーター・ヘイニングは関係がなさそうであるということまで判明した。ヘイニングは色々と捏造疑惑がある人物ではあるが、こと日本においては彼は無関係の可能性が高い*2。よって今回はそのあたりを解説していきたい。できれば下記の過去記事2つをご覧頂いたほうが、話の流れが分かり易いかと思います。
過去記事①(ニコニコブロマガ版とはてなブログ移行版)
site.nicovideo.jp
www.vampire-load-ruthven.com
過去記事②
www.vampire-load-ruthven.com