シリーズ目次(クリックで展開)
①吸血鬼の元祖はドラキュラではなく、吸血鬼ルスヴン卿こそが吸血鬼の始祖
②吸血鬼ドラキュラより古い吸血鬼小説はこれだけある
③最初の吸血鬼小説の作者ジョン・ポリドリと詩人バイロン卿、その運命の出会い
④バイロンの吸血鬼の詩「異教徒」とバイロンの祖国追放
⑤『最初の吸血鬼』と『醜い怪物』が生まれた歴史的一夜「ディオダティ荘の怪奇談義」
⑥最初の吸血鬼小説と当時の出版事情の闇、それに翻弄される者たち
⑦この記事
⑧日本に喧嘩を売ったフランスの吸血鬼のクソオペラ
- ヨーロッパ中で人気となった小説「吸血鬼」、あのゲーテも大絶賛
- 特にフランスで大流行するポリドリの「吸血鬼」、勝手な続編も
- フランスで大流行するポリドリの「吸血鬼」の劇
- 吸血鬼の劇はあの大デュマの運命を変えた
- 劇でも「吸血鬼」と「フランケンシュタイン」は縁がある
- オペラやバレエまでに発展したポリドリの「吸血鬼」
- 補足① フェヴァル作「吸血鬼の息子」は、1820年作ではない?
- 補足②「吸血鬼のお年玉」は正しい翻訳なのか?
ヨーロッパ中で人気となった小説「吸血鬼」、あのゲーテも大絶賛
前回の続きより解説していこう。今回はポリドリの「吸血鬼」から派生した作品群を紹介していくが、その物語の内容については後日、ポリドリの「吸血鬼」と共に対比させる形で紹介していきたい。今回は、ポリドリの「吸血鬼」から派生した作品が作られた歴史的な流れと、そのエピソードを中心に解説していく。
ポリドリの「吸血鬼」は編集者の思惑により、バイロンの作品として発表されてしまった。ポリドリ、バイロン双方から正しい作者を公開するように要請があったにも関わらず、修正はされなかった。良くも悪くも有名なバイロンの作品とした方が売れると思ったためで、実際ポリドリの「吸血鬼」はイギリスではその年の内に7版(註1)も重版がかかるほど、人気を博した*1。前回も説明したが、その人気は国内にとどまらず、ヨーロッパ中に瞬く間に広まった。まずフランスに伝播、アンリ・ファーベルが「ヴァンパイア、英語から訳されたバイロン卿の小説(Le Vampire,
nouvelle traduite de l'anglais de lord Byron)」という題名で翻訳した*2*3*4。
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