吸血鬼の歴史に詳しくなるブログ

吸血鬼の形成の歴史を民間伝承と海外文学の観点から詳しく解説、日本の解説書では紹介されたことがない貴重な情報も紹介します。ニコニコ動画「ゆっくりと学ぶ吸血鬼」もぜひご覧ください。

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ニコニコ動画「マルシュナーのオペラ『吸血鬼』の演奏を比較する動画を投稿しました

シリーズ目次(クリックで展開)吸血鬼の元祖はドラキュラではなく、吸血鬼ルスヴン卿こそが吸血鬼の始祖
吸血鬼ドラキュラより古い吸血鬼小説はこれだけある
最初の吸血鬼小説の作者ジョン・ポリドリと詩人バイロン卿、その運命の出会い
バイロンの吸血鬼の詩「異教徒」とバイロンの祖国追放
『最初の吸血鬼』と『醜い怪物』が生まれた歴史的一夜「ディオダティ荘の怪奇談義」
最初の吸血鬼小説と当時の出版事情の闇、それに翻弄される者たち
ドラキュラ以前に起きた「第一次吸血鬼大ブーム」・大デュマの運命も変えた
日本に喧嘩を売ったフランスの吸血鬼のクソオペラ

年始早々、下の動画を投稿したのでご紹介します。

上記動画を解説した以前の記事

www.vampire-load-ruthven.com

www.vampire-load-ruthven.com

 上記の記事で散々紹介した、ハインリヒ・マルシュナー作曲のオペラ「吸血鬼」"Der Vampyr"、Youtube上にはパブリック・ドメインの動画が幾つかアップロードされています。それぞれの一部のシーンを抜き出し、それを比較する動画をニコニコ動画に投稿したので、是非ご覧ください。歌詞に翻訳を付けて、大まかなストーリー解説も行いましたので、全体のストーリーがなんとなくつかめるかと思います。尚、今回紹介したYoutube上にある動画は下記の3つです。

普通版(2002年 LOLA版)


ソープ・オペラ版(1992年 英国BBC放送版)


クソオペラ版(2008年 フランス・メッツォTV作成版)


 簡単にだけ概要紹介。このマルシュナーのオペラ「吸血鬼」、内容面ではジョン・ポリドリの小説「吸血鬼」が発端。ポリドリの「吸血鬼」はヨーロッパ中で大ベストセラーとなり、特にフランスで人気となった。フランスの幻想文学の祖シャルル・ノディエが、ポリドリの小説からメロドラマ劇を翻案、それがまたイギリスやドイツへと渡った。イギリスではノディエの劇から「島の花嫁」という劇がさらに翻案された。ドイツではノディエの劇の台本がドイツ語訳され、少なくとも2つのオペラが作られた。一つはリントパイントナー作曲の「吸血鬼」。もう一つが今回紹介するマルシュナーの「吸血鬼」となる。このように当時ヨーロッパ中を熱狂させたポリドリの小説「吸血鬼」の派生作品の一つ、そしてとくに人気を博した「シャルル・ノディエのメロドラマ劇」の翻案作品の中の一つとなる。

 音楽面で言えば、マルシュナーは「魔弾の射手」で有名なカール・マリア・フォン・ウェーバーの助手だったのだが、そのウェーバーの影響が見て取れるとされる。そしてマルシュナーの「吸血鬼」の初演を、あの「ワルキューレの騎行」で有名なワーグナーが観劇していた。ワーグナーは後に自分でも指揮をとり、さらには「さまよえるオランダ人」というオペラを作る。この「さまよえるオランダ人」はマルシュナーの「吸血鬼」の影響を大いに受けたものとされる。これが出たとき、「吸血鬼」は早くも時代遅れと評価され、またこれを機にマルシュナーの生涯はワーグナーの陰に隠れてしまい、晩年にはほぼ忘れ去られてしまったという。マルシュナーはウェーバーが死んでからワーグナーが台頭するまでをつなぐ人物という評価がなされ、実際「魔弾の射手」ー「吸血鬼」ー「さまよえるオランダ人」と、「魔弾の射手」と「さまよえるオランダ人」を橋渡しをした作品だと評価されている。


 オペラ「吸血鬼」が出来た経緯や内容の詳しい解説、典拠等は、上記の過去記事で散々解説したので、詳細は以前の記事をご参照願います。

 同じ内容でも、演出でこうも変わるのか、というのがお分かりになるかと思います。とくに2008年のクソオペラ版フランスで上演のものは、なぜ日本要素を織り交ぜたのかぜひ知りたいところ。実は以前、主要出演者たちをインタビューした記事があったのですが、初演が実はハンガリーだったので、その記事はハンガリー語でした。そのため機械翻訳の精度が悪く、何を語っていたのかがつかめず、しかもそのインタビュー記事は削除されてしまい、今はもう確認の術がなくなってしまいました。分からなくてもその記事を保存しておくべきだったと後悔するばかりです。


 最後に、遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。今年もどうかよろしくお願いいたします。今年も動画とブログを同時進行で進めて参りたいと思います。私生活の事情もありゆっくり進行となりますが、吸血鬼の啓蒙活動に邁進していく所存です。