シリーズ目次(クリックで展開)
⓪吸血鬼小説『死者よ目覚めるなかれ』の作者はティークではなくて別人だった!本当の作者とは!?
(ヘイニングの不正を知る前の記事)
①女性作家による最初の吸血鬼小説「骸骨伯爵、あるいは女吸血鬼」が捏造作品だったことについて
②古典小説「フランケンシュタインの古塔」はピーター・ヘイニングの捏造?他にもある数々の疑惑
③ホレス・ウォルポールの幻の作品「マダレーナ」が、別人の作品だった
④女性で最初に吸血鬼小説を書いたエリザベス・グレイという作家は存在していなかった
⑤ドラキュラに影響を与えた作者不詳の吸血鬼小説「謎の男」の作者が判明していた
⑥ドラキュラのブラム・ストーカー、オペラ座の怪人のガストン・ルルーに関する捏造
⑦吸血鬼小説「死者よ目覚めるなかれ」の作者を間違えたのは、ピーター・ヘイニングではなかった?
⑧吸血鬼小説「死者よ目覚めるなかれ」を1800年作と紹介してしまったのは誰なのか
⑨【追補】吸血鬼小説「謎の男」の作者判明の経緯について
⑩この記事
生前、いくつもの古典怪奇小説を「発掘」「新発見」したとして有名になった、イギリスのホラー・アンソロジストの故ピーター・ヘイニング。彼は、その数々の「新発見」の実物を見せることはなく、その「新発見」した大半(もしくはその全て)が、彼による捏造である可能性が極めて高いと考えられている*1。ヘイニングの厭らしいところは、彼の捏造疑惑にはその殆どに逃げ道があり、彼の捏造であると完全に断定できないところだ*2。だが肝心のヘイニングも2007年に亡くなっているから、問いただすことはもうできない。これまでの記事を見てきた方にはお分かりになろうだろうが、彼の主張のせいで誤った説が長年流布してしまった。そして多くの研究者が多大な労力をかけて検証している。それを考えれば、彼の所業はもはや許してはならないとさえ思っている。
そんなヘイニングの疑惑は、私が知りうる限りのことはこれまでに記事で紹介した。以前、流石にもう打ち止めだろうと言ったが、また彼の捏造疑惑案件を発見してしまった。しかもそのうちの一つが吸血鬼の短編であるから、このブログの趣旨としては紹介せざるを得ない。そして判明した彼の捏造だが、アメリカ版浦島太郎として有名なリップ・ヴァン・ウィンクルについてまで捏造していたことを発見、これにはもう驚くしかなかった。最初その言及を見つけたとき、「リップ・ヴァン・ウィンクルほどの著名な作品を捏造なんてしたらすぐにばれるから、いくらヘイニングでもそんなことはしないだろう。流石に書き込んだ人の勘違いかなにかでは?」と思ったぐらいだ。だが実際調査したところ、ヘイニングは私の想像の斜め上のことをやらかしていたことを掴んだ。ということで、今回もヘイニングの数々のやらかしについて紹介していこう。最初はヘイニングの不正以外のことも言及していく。それは日本では知られていない吸血鬼作品の話題が含まれているため。このブログの趣旨と、そして何より個人的興味を引いた為、話の流れに沿って紹介させて頂くので、どうかご容赦願いたい。
*1:単純にヘイニングが間違えて紹介した可能性もあるが、それならそれで多くの作品で紹介間違いをしたことになる。そうなると彼の調査手法は非常にいい加減で、裏付けは一切取っていないということになり、また見直しもしていないということになる。一つ二つならまだ調査ミスで済むだろうが、あれだけ多く間違えているのであれば、まず彼による捏造であると疑ってかかるべきだろう。
*2:逃げ道があるといっても、肝心の証拠がない以上、実際はヘイニングの主張は根拠・証拠がないとしてつっぱねることができる。ただ彼の主張は嘘であると完全に断ずることもできないが。