- 当時の出版事情:作家の力は弱かった
- 盗作疑惑をかけられるポリドリ、そして自殺
- バイロン卿と吸血鬼ルスヴン卿、その共通点
当時の出版事情:作家の力は弱かった
前回は”最初の吸血鬼”と”フランケンシュタイン”が同時に生まれるきっかけとなった歴史的一夜、ディオダティ荘の怪奇談義について解説した。今回からはいよいよ、その怪奇談義によって生まれた”最初の吸血鬼小説”について解説していこう。とくに今回は、日本の書籍や論文ではこれまで紹介されたことがないエピソードを紹介していくので、ご期待頂きたい。
前回説明したようにポリドリが書いた「吸血鬼」は、どういう訳か作者はポリドリではなく、ポリドリが侍医として仕えていた主人のバイロン卿の名で出版されてしまった。この事情を知るには、わき道に逸れてしまうが当時の出版事情について、ざっくり知っておく必要がある。荒俣宏のアンソロジー「怪奇文学大山脈Ⅰ巻 西洋近代名作選 19世紀再興篇」:東京創元社(2014)において、荒俣が当時の西欧における出版事情について詳しく解説している。そしてせっかくなので、興味深いエピソードもついでに紹介しておこう。
続きを読む